P2M試験によるプロジェクトマネジメントを学習開始

P2M(プログラム&プロジェクトマネジメント)の入門資格であるPMC資格試験を受験します。建設コンサルタントで橋梁の設計をしている人間が、なぜ経営寄りに見えるマネジメント資格を受けるのか——という話です。

先にはっきりさせておくと、目的は資格を取ることではありません。試験勉強という強制力を使ってプロジェクトマネジメントを体系的に学び直し、それを日々の設計業務に落とし込むことが目的で、PMC受験はその途中経過の区切りという位置づけです。

  • 橋梁設計の現場で、P2Mのどこが効きそうか
  • 下請け(設計業務委託)という立場とP2Mの相性
  • 設計しか担当しなくても、発注者〜施工〜完成〜維持管理を通して見るということ
  • 技術士・総合技術監理部門との重なり
  • PMC試験の制度と、パナソニックのeラーニング(講座+予想問題集)の話
  • 会社の資格取得支援は使えない——約9.5万円を実費で払ってでも学ぶ価値があると判断した理由と、受講者が挙げているメリット
  • PMC資格試験 受験予定
  • 建設コンサルタント/橋梁設計
  • RCCM(鋼構造及びコンクリート)保有
  • R8 技術士二次(建設部門)結果待ち
  • 改訂4版 P2M標準ガイドブック
  • 実費 約9.5万円(会社支援の対象外)
  • 目的は実務への適用
目次

1. なぜ、橋梁設計者がP2Mなのか

私は建設コンサルタントで、橋梁の設計を担当しています。立場としては下請けで、元請コンサルタントから設計業務委託という形で業務をいただいています。

ただ、実感としては「上下」ではなく「役割が違うだけ」という感覚が強くあります。橋梁の条件は地質・道路線形・河川条件・施工計画と密接に絡むので、こちらから技術提案をすることも多く、その提案が全体計画を動かすこともある。対等な立場でひとつの成果をつくっているという感覚です。

そう思いながら仕事をしていると、だんだん気になってくることがあります。

  • 「この設計は、そもそも何のために必要だったのか」を、上流に遡って説明できているか
  • 照査で品質は担保しているが、工程・コスト・リスクを「管理」として扱えているか
  • 元請・発注者・施工者・地元との関係性のマネジメントを、勘と経験だけでやっていないか
  • 担当は設計だけだが、発注者〜施工〜完成〜維持管理までを一連のものとして見られているか
  • 担当業務は回せるが、事業全体を俯瞰する言葉を自分は持っているか

技術的な照査能力は、経験を積めば伸びます。しかし「事業として、この仕事はどう位置づくのか」を語る枠組みは、意識して学ばないと身につかない。そこで手を伸ばしたのがP2Mでした。

設計は上手くなった。では、その設計が乗っている「事業」を、自分は説明できるのか。

2. P2Mとは何か——「プロジェクト」の上に「プログラム」を置く考え方

P2M(Program & Project Management)は、日本プロジェクトマネジメント協会(PMAJ)が体系化した、日本発のプロジェクトマネジメント知識体系です。2024年9月に改訂4版のP2M標準ガイドブックが発行され、資格試験もこれに準拠して出題されます。

2-1. PMBOK®との一番大きな違い

PMBOK®が「与えられたプロジェクトを、いかに上手く回すか」に軸足を置くのに対し、P2Mはその上に「プログラム」という層を置くのが最大の特徴です。

プロジェクト

ミッションと責任範囲(スコープ)が比較的明確。だから外部に切り出しやすく、リスクも数えやすい。効率性と公正性が問われる世界。

プログラム

事業戦略にしたがって能動的に生み出される、複数プロジェクトの束。多義性・拡張性・複雑性・不確実性を抱えたまま進む。有用性と安定性が問われる世界。

ここで大事なのは、プログラムは「答えが一意に決まらないこと」を、はじめから許容しているという点です。P2Mではこれを多義性と呼びます。「何をやれば成功なのか」自体が最初は曖昧で、その成功の姿を定義するところからがマネジャーの仕事だという立て付けになっています。

ここが橋梁設計者に刺さりました

誤解のないように書いておくと、設計の実務は「何も決まっていない」わけではありません。基本的な与条件は業務の開始時点で決まっています。そうではなく、与条件のなかに「変わる要素」が含まれているということです。

そして、詳細設計を進めていくうちに、細かな条件をその都度決めていく場面が数多くあります。——地質調査の追加で支持層の想定が動く、施工ヤードや仮設の制約から構造を見直す、関係機関協議で取り合いが変わる、上位計画の見直しが下りてくる。決めながら進むのが設計の実態です。

従来のPM教科書だと、こうした状況は「前提が悪い、早く固めろ」という扱いになりがちでした。P2Mは逆で、変わりうるものを抱えたまま進むのが当たり前だとし、その曖昧さを扱うこと自体をマネジメントとして定義しています。実務の肌感覚に近いと感じました。

2-2. 3Sモデル——事業のライフサイクルを3つのプロジェクトで捉える

P2Mでは、プログラムのライフサイクルを構想・検証・実装・運用の4フェーズで捉え、そこに現れるプロジェクトを3S(Scheme/System/Service)モデルという3つの形態に整理します。

構想・検証フェーズ

スキームモデルプロジェクト(Scheme)

「何を実現すべきか」を構想し、その構想が成り立つかを検証する段階。仕組みづくりの設計図を描くところ。

橋梁でいえば:構想・計画段階、路線比較、予備設計(橋梁形式の一次選定比較・二次選定比較)、環境・用地・地元条件の検討
実装フェーズ

システムモデルプロジェクト(System)

構想を実体としてつくり上げる段階。要求が明確化され、QCDの管理技術が最も効く。

橋梁でいえば:詳細設計(上部工・下部工・基礎の設計、構造細目の決定、配筋)、数量計算・積算、施工計画、そして工事そのもの
運用フェーズ

サービスモデルプロジェクト(Service)

つくった仕組みを使って価値を出す段階。ここまで含めて初めて事業。

橋梁でいえば:供用、定期点検・健全性診断、補修補強、長寿命化修繕計画、アセットマネジメント

この3つを並べてみて、あらためて突きつけられたことがあります。私が担当している詳細設計は、事業全体で見ると「Systemの一部」でしかないということです。

そして、橋梁という構造物の価値は供用してから100年にわたって発生します。つまりServiceフェーズが圧倒的に長い。維持管理のしやすさ、点検しやすい構造、補修可能なディテール——これらはSystemの段階で決まってしまうのに、設計者の視野がSystemの中で閉じていると、その判断ができません。

ただ、最近になって、この整理には続きがあると感じるようになりました。

補強設計が増えてきた——設計の仕事はServiceの中にも入っている

近年、耐震補強や補修補強の設計業務が明らかに増えています。高度経済成長期に架けられた橋梁が一斉に高齢化し、新設よりも維持管理のほうが重要になってきている——これは現場で数字として感じるところです。

3Sモデルで見ると、補強設計はServiceフェーズの内側で発生する設計です。供用中の橋を、点検・診断の結果を受けて、使い続けられる状態に戻す。つまりServiceを回し続けるためのSystemであり、設計という仕事は、もはやSystemだけの住人ではなくなっているということです。

そう考えると、話は一段はっきりします。Service側に立つ業務を担当するからこそ、Serviceの視点でSystemを設計できるようになるはずだ、と。補強設計で「点検できない」「補修しにくい」構造に苦労した経験は、新設の詳細設計に持ち帰るべき知見です。

橋梁の設計は「つくるための設計」であると同時に、「100年使うための設計」でもある。3Sモデルは、それを言語化してくれる枠組みでした。

2-3. P2M 7Keys——原理原則が7つに絞られている

改訂4版では、プログラム・プロジェクトを成功に導く原理原則が7つ(P2M 7Keys)に整理されています。まずはこの7つを、設計業務に引き寄せて読んでみました。

  1. 価値第一成果物を納めることではなく、価値を生むことが目的。
  2. 戦略との整合節目ごとに上位計画・上位方針と整合を取り直す。
  3. ゴール起点成果から逆算(バックキャスト)して活動を組む。
  4. システム思考全体を俯瞰し、要素間の関係性で構造をとらえる。
  5. 上流への注力上流に時間と工数を厚くかけるほど成果が出る。
  6. チーミングチームが最大の成果を出せる状態を維持・改善する。
  7. テーラリング対象に合わせてマネジメントの型を選び、調整する。

⑤上流への注力 と ④システム思考 は、橋梁設計そのもの

上流への注力——橋梁形式や基礎形式の選定を誤れば、以降どれだけ丁寧に計算しても取り返せません。手戻りコストが上流ほど小さいのは、設計者なら体で知っていることです。

システム思考——橋梁は、部材を個別に決めれば成立するものではありません。上部工と下部工の力の受け渡し、支承条件、地質、河川・道路の制約、施工ヤード、架設の順序。関係性の中でしか設計が決まらないのは、まさにシステム思考の対象です。

つまり、私たちはすでに7Keysの一部を実践している。P2Mを学ぶ価値は、それを「暗黙知」から「説明できる形式知」に変えるところにあると考えています。

そしてこの暗黙知と形式知というテーマは、技術士第二次試験でも「技術継承」の文脈で繰り返し問われる論点です。ベテラン技術者の退職で失われる技術をどう次世代へ引き継ぐか——その答えは結局、個人の経験に埋まっている判断の根拠を、言葉と手順に変えて共有できる形にすることに行き着きます。

P2Mは、まさにその「言葉と手順」を体系として持っている。自分の設計判断を説明可能にする作業は、そのまま技術継承の準備にもなります。

3. 「下請け」でもP2Mは活きるのか

P2Mを調べ始めたとき、最初に感じた引っかかりがこれでした。P2Mの主戦場は新規事業や経営変革——つまり自発型のプロジェクトに見えます。私たちのような受注型、しかも下請けに、この体系は本当に使えるのか。

結論から言うと、使えます。むしろ標準ガイドブック自体が、受注型企業にもプログラムマネジメントが成り立つことを明示的に扱っています。

3-1. 受注型企業にも「プログラム」はある

ガイドブックでは、受注を主体とする企業であっても、新しい顧客を開拓し、関係を築き、継続的な取引につなげていく一連の活動は、それ自体がプログラムだとされています。3Sモデルに当てはめると、こうなります。

3Sモデル受注型企業での活動建設コンサル(下請け)に置き換えると
Scheme
(構想・検証)
開拓すべき顧客を調査・分析し、参入シナリオをつくるどの元請・どの分野・どの技術で勝負するかを決める。得意分野の見極め
System
(実装)
実際に受注して成果を出し、認めてもらう目の前の設計業務で成果を出す①成果品の品質が高い(照査で指摘が出ない、そのまま施工に回せる)、②相談すれば解決策が返ってくる(困ったときに投げれば形になる)、③言われた範囲の外まで気づいて提案する——この3つが揃うと「あそこは頼れる」になる
Service
(運用)
構築した仕組みの運用を支援し、継続的な収益につなげる設計後の施工協議・変更対応・維持管理まで付き合う。次の指名につながる

ここで腑に落ちたのは、1件1件の設計業務は「プロジェクト」だが、その連なりは「プログラム」になり得るということです。個々の業務を淡々とこなしているつもりでも、その積み重ねは会社の受注構造そのものをつくっている。それを意識してやるのか、無自覚にやるのかで、10年後は変わってきます。

3-2. 「対等な役割分担」をP2Mの言葉で説明すると

冒頭に書いた「下請けだが対等な役割分担だと感じている」という感覚も、P2Mの用語で言い直せることに気づきました。

P2Mでは、プロジェクトはプログラムからサブミッションを切り出し、ある程度の自律性を持って遂行する仕事と定義されています。スコープが明確だからこそ外部に切り出しやすいのであって、これは能力の上下ではなく、構造上の分業です。

元請コンサル統合

事業全体・全体工程・発注者との調整を担い、全体を統合する役割。P2Mでいえばプログラム側に近い視点を持つ。

下請け(私たち)自律

切り出されたスコープを自律的に遂行し、専門性で品質を担保する役割。だからこそ、専門領域では提案する責任がある。

だから対等:自律性を持つ以上、指示待ちではなくスコープ内の最適解を提案するのが役割。上下ではなく、担う責任の種類が違う。

そして技術提案という行為は、P2Mでいえば下位プロジェクトから上位プログラムへのフィードバックにあたります。現場を一番よく知る立場から、上流の判断材料を返す。P2Mがミドルマネジメント層の主体的な参画を重視しているのは、まさにこの構図です。

学習の狙いは「共通言語」を持つこと

元請や発注者と話すとき、「工期が厳しい」「ここはリスクがある」と言うより、クリティカルパス/リスクの定量評価/スコープ変更の影響という共通の枠組みで話せた方が、提案は通りやすい。P2Mを学ぶ実利は、まずそこにあると考えています。

3-3. 受注型プロジェクトは、発注者にとっての「自発型プロジェクト」

もうひとつ、ずっと引っかかっていた問いがあります。私は設計しか担当していない。それなのに、発注者から施工、完成、維持管理までを通して考える必要があるのか——というものです。

P2Mは、ここに正面から答えていました。まず、プロジェクトを立場で2つに分けます。

自発型プロジェクト
Internal Project

事業主体が自ら発意して実施するプロジェクト。完了したら成果を定常業務(オペレーション)に引き渡す。

受注型プロジェクト
External Project

顧客から依頼されて実施するプロジェクト。私たちの設計業務はこちら。受注を専業とする企業も多い。

そのうえでガイドブックは、こう指摘しています——受注型プロジェクトとは、事業主にとっての自発型プロジェクトにほかならない。だから最終的な成果を獲得するには、そのライフサイクル全体にわたって、事業主と受注者が協働することが重要であると。

同じひとつの仕事が、立場によってこう見えている、ということです。

 私たち(受注者)から見ると発注者から見ると
位置づけ受注型プロジェクト(設計業務委託)自発型プロジェクトの一部=事業というプログラム
範囲契約で切り出されたスコープ構想・計画〜設計〜施工〜供用〜維持管理
完了とは成果品の納品・検査供用が始まってからが本番
価値の測り方受注額 − 原価。契約期間内で確定する供用後の定常業務が生む便益まで含めて評価

価値評価の「時間軸のズレ」

ガイドブックは、受注型の価値はプロジェクトの期間内だけで評価できるのに対し、自発型の価値はサービスモデル以降の定常業務が生む利益まで見ないと測れないとしています。

つまり、私たちが「良い設計だった」と判断する時点と、発注者が最終的に価値を判断する時点は、そもそもズレている。橋梁なら、その差は100年です。

さらにもう一箇所。成果物がもたらす効果や内容を事前に十分明確にできない種類のプロジェクトでは、顧客満足は成果物そのものではなく、成果物から得られる効果あるいは価値に基づく——とも書かれています。

橋梁の設計は、まさにこれだと思いました。図面と計算書が契約どおりに揃っているのは前提であって、満足そのものではない。その橋が安全に架けられ、点検しやすく、長く使えるか——評価は結局そこで決まります。

成果品を納めることと、価値を出すことは、同じではない。
7Keysの①価値第一は、受注者にこそ効く原則だと思います。

正直に書いておくと、ここには制約もあります

ガイドブックは、3Sモデルの一部しか担わない受注型プロジェクトには、受注企業の立場では原則として上位プログラムは存在しないとも書いています。「私たちの設計業務の上にプログラムがある」とは、P2Mの定義上そのままでは言えません。

でも、発注者の側には確実にプログラムがあります。だとすれば私たちにできるのは、その見えないプログラムを想像し、自分のスコープをそこに位置づけること。これは資格の有無に関係なく、明日からできることです。

3-4. 「担当の前」と「担当の後」は、そもそも試験範囲に入っている

調べていて面白かったのは、P2Mが「自分が担当するプロジェクトの前後」を扱う章を、独立して置いていることでした。しかも、これらはPMCの出題範囲(5-3で後述)にしっかり入っています

P2Mの章(第3部)扱っているもの橋梁事業で言えば
第2章
プレ・システムモデル
プロジェクト
実装に入る前の段階構想・計画、路線や形式の比較検討、発注者の意思決定、業務が発注されるまで
第3〜6章
立上げ・計画・実行・コントロール
自分が担当する範囲設計業務そのもの。スコープ、工程、コスト、品質、リスク、協議
第7章
終結
引渡し・検収、資源の蓄積(知的資産の再資源化)、リスクの教訓成果品の納品・検査、そして次の業務に回すための教訓の蓄積
第8章
ポスト・システムモデル
プロジェクト
つくったあと。完了報告、運転計画、要員の調達とトレーニング完成・引渡し後の施工協議対応、維持管理する側への引き継ぎ

つまりPMCの学習内容は、「設計だけやっていればよい」とは一度も言っていないのです。むしろ担当スコープの前後を見ることを、章立てそのものとして要求している。これは受ける前から収穫でした。

7Keysで言えば、③④⑤がそのまま当てはまります

  • ③ゴール起点——供用後の姿からバックキャストして、いま何を決めるべきかを考える
  • ④システム思考——発注者・元請・施工者・維持管理者を、関係性の構造として捉える
  • ⑤上流への注力——上流の判断が下流を縛る。だから上流に時間と工数を厚くかける

設計しか担当していないからこそ、前後を見る意味があると考えています。上流を知らなければ与条件を疑えないし、下流を知らなければ「つくれる・直せる」設計にならないからです。

4. 技術士——とくに総合技術監理部門との関係

P2Mを学ぼうと思ったもうひとつの理由が、技術士試験、とくに総合技術監理部門(総監)との重なりです。

いまの立ち位置

令和8年度の技術士第二次試験・建設部門(鋼構造及びコンクリート)を受験し、現在は結果待ちです。

結果がどうなるにせよ、次に見ているのは総合技術監理部門です。そして総監の勉強を始める前にP2Mで枠組みを持っておきたい——というのが、いまP2Mに手を出している理由のひとつでもあります。筆記が終わって発表までのこの期間は、次の土台を仕込むのにちょうどいい時間でもありました。

4-1. 総監の「5つの管理」とP2Mの対応

総合技術監理部門は経済性管理・人的資源管理・情報管理・安全管理・社会環境管理という5つの管理を、トレードオフを踏まえて俯瞰的に統合することを問う部門です。この構造は、P2Mの守備範囲とかなりの部分が重なります。

総合技術監理 5つの管理対応するP2Mの領域重なるキーワード
経済性管理プロジェクトマネジメント(スコープ・スケジュール・コスト・品質・調達)/事業戦略の会計とファイナンスWBS、EVM、クリティカルパス、品質管理、調達管理、予算管理
人的資源管理プロジェクト組織マネジメント/人材マネジメントプロジェクト組織、PMO、チームビルディング、リーダーシップ、動機づけ、学習する組織
情報管理情報マネジメントと情報インフラストラクチャー/知識・情報資産コミュニケーション管理、形式知と暗黙知、知識創造、DX、情報セキュリティ
安全管理プロジェクトリスクマネジメント/プログラムリスクマネジメントリスク特定・分析・対応、リスク登録簿、危機管理
社会環境管理プログラム価値評価マネジメント/関係性マネジメントステークホルダー、価値評価、社会的受容性、説明責任、倫理

並べてみると分かりますが、総監の5管理は、ほぼそのままP2Mの章立てに写像できます。総監が「何を管理すべきか」の分類軸を与えるのに対し、P2Mは「それをどう回すか」の手続きを与える、という関係に見えています。

4-2. 総監の記述式で問われるのは「俯瞰」と「トレードオフ」

総監の記述式で繰り返し問われるのは、個別最適ではなく全体最適、そして管理どうしが衝突したときにどう判断したかです。

これは、P2Mの③ゴール起点④システム思考そのものです。「工期を優先すれば品質と安全にしわ寄せが行く」という構造を、関係性の構造として説明できるか。P2Mの学習は、この論述の骨格をつくる訓練になると考えています。

P2Mを学ぶと、総監の答案で使える言葉が増えます
ミッションプロファイリングバックキャストステークホルダー トレードオフスコープクリティカルパスEVM リスク対応戦略テーラリングPDCA形式知/暗黙知 プロジェクト組織PMOアジャイル両利きの経営

4-3. RCCMの「管理技術力」とも重なる

あわせて言うと、RCCMの問題Ⅲ(管理技術力)も同じ土俵です。私はRCCM(鋼構造及びコンクリート)を保有しているのですが、あのとき問題Ⅲで書いた内容——業務の工程管理・品質管理・安全管理・コスト管理をどう組み立てるか——は、いま思えばP2Mの第3部でやっていることとほぼ同じでした。

当時は自分の業務経験から手探りで組み立てていたのですが、P2Mで用語と枠組みを持っておけば、骨子はもっと速く、もっと確かに組めるはずです。RCCMの更新やCPDでも、この土台は効いてくると考えています。

P2Mは「PM資格のための勉強」ではなく、技術士(総監)・RCCMと共通の土台になる。
だから、投じた時間が無駄になりにくいと判断しました。

5. PMC資格試験の概要

ここからは、実際に受けるPMCの制度の話です。PMC(Project Management Coordinator)はP2M資格体系の入門・基礎レベルにあたります。

5-1. P2M資格の階層

資格レベル試験形式
PMCe初級(大学・大学院・高専の認定PM講座履修者向け)試験なし・申請のみ
PMC基礎(今回受験するのはここ)CBT/四肢択一 50問・75分
PMSプログラム試験中級(プログラムマネジメント領域)CBT/四肢択一 50問・75分
PMS中級(プロジェクトマネジメント領域)CBT/四肢択一 100問・150分
PMQ上級実務経歴書による書面審査+課題論述(180分)
PMR上級(プログラム&プロジェクト統合)モジュール試験(2日間)+個人面接

PMQ以上は3年以上のプログラム・プロジェクト実務経験が要件になります。まずはPMCから積み上げていく形です。

5-2. PMC試験の要点

項目内容
受験資格PMC講習会の受講修了者eラーニング(PMC)実施機関の修了者/PMCe資格者のいずれか
※誰でもいきなり受験できる試験ではなく、先に講習またはeラーニングの修了が必要です
試験形式CBT(全国のテストセンターで受験)
問題数・時間四肢択一 50問75分
出題範囲改訂4版 P2M標準ガイドブックに準拠
受験料17,050円(税込・事務手数料550円を含む)
試験日程年6回程度(例:5月・7月・9月・11月・1月・3月)。申込期限は試験開始のおよそ1か月前
申込CBTソリューションズの受験予約サイトから
合格後登録料 9,438円で5年間有効。更新時のCPUポイント申請は不要(PMSと異なる点)

5-3. 出題配分——「第3部 プロジェクトマネジメント」が主戦場

PMCは名前のとおりプロジェクトマネジメント寄りで、プログラム側(第2部)よりも第3部の比重が圧倒的です。おおよその配分は次のとおりとされています。

出題領域配分の目安主な内容
第3部
プロジェクトマネジメント
約68%プロジェクトの定義/立上げ/計画(スコープ・WBS・スケジュール・コスト・品質・リスク・調達・コミュニケーション)/実行・コントロール/終結/アジャイル
第5部
プロジェクト組織・人材マネジメント
約24%プロジェクト組織、PMO、チームビルディング、成熟度、リーダーシップ、動機づけ、実践力
第5部
情報マネジメント
約6%情報マネジメント、情報インフラ、クラウド、DX、生成AI、ガバナンス、情報セキュリティ
第1部 P2Mの概要と特徴P2M事業モデル、3Sモデル、7Keysなど。全体の土台として押さえる

配分から読める学習方針

約7割が第3部なので、まず第3部を回し切るのが最短ルートです。ただし第1部(3Sモデル・7Keys)を先に読んでおくと、第3部の記述が「なぜそうなっているか」で繋がって理解しやすくなります。分量は少なくても、最初に読む価値があると考えています。

なお合格基準(正答率)は明確には公表されていないようです。合格率はおおむね6〜7割台と言われており、きちんと範囲を潰せば通る試験という位置づけで臨みます。

6. 学習計画——パナソニックのeラーニングを実費で受講します

前述のとおり、PMCは受験するために講習会かeラーニングの修了が必要です。私はパナソニック デジタル(旧・パナソニック ソリューションテクノロジー)のPMC資格対策講座(eラーニング)を利用します。PMAJ認定の受講推奨講座で、修了すると受験資格が得られ、修了者情報は実施機関からPMAJへ通知される仕組みです。

6-1. 申し込むのは「セットコース」

この講座には2つのコースがあり、使用教材が違うだけで講座内容は同一とされています。私が申し込むのは(1)の予想問題集セットです。

コース内容受講料(税込)
(1)セット
これにします
PMC資格対策講座(ガイドブックなし)+ PMC試験 予想問題集63,800円
(2)講座のみPMC資格対策講座(ガイドブックなし)59,400円
(参考)単品合算59,400円+予想問題集 7,700円67,100円
→ セットなら3,300円安い

「ガイドブックなし」を選ぶ理由

講座には改訂4版のP2M標準ガイドブックは含まれていません(書店等で別途購入)。使用教材はパナソニックオリジナルの「PMC研修テキスト(PDF)」です。

判断:ガイドブックは744ページ・4,620円(税込)これは「読む本」ではなく「引く本」だと割り切りました(詳しくは6-4)。PMC合格後もPMS・総監で使い続ける本なので、講座とは切り離して自分で買うほうが素直だと考えました。

予想問題集を最初から付ける理由重要

300問がランダム出題され、期間中は何回でも受験可能。その場で採点され、解説を見ながら間違えた箇所を確認できる形式です(標準学習時間5時間)。

判断:PMCは四肢択一50問の試験です。インプットだけでは択一の精度は上がらないので、アウトプットの量が本体だと考えています。しかもセットにすると3,300円安くなる——付けない理由がありません。

6-2. 講座のカリキュラムが、出題範囲とそのまま重なっている

講座内容を見て「なるほど」と思ったのが、カリキュラムの構成が5-3の出題配分とほぼ一致していることでした。

講座のカリキュラム対応する出題領域
第1部 P2Mの概要と特徴P2M事業モデル、3Sモデル、7Keys——全体の土台
第3部 プロジェクトマネジメント
第1〜9章
約68%の主戦場。プロジェクトとPM/プレ・システムモデル/立上げ/計画/実行/コントロール/終結/ポスト・システムモデル/アジャイル
第5部 事業経営基盤
第1章・第2章・第6章
プロジェクト組織マネジメント・人材マネジメント(約24%)/情報マネジメントと情報インフラ(約6%

つまり「講座を潰す=出題範囲を潰す」

744ページのガイドブックを頭から読むと、第2部(プログラムマネジメント)や第4部(事業戦略)にも当然引き込まれます。それ自体は面白いのですが、PMCの出題範囲としては対象外です。

講座のカリキュラムは範囲の輪郭を最初から与えてくれるので、これを軸にして、興味で読み進める分は「試験対策とは別枠」と割り切ることにします。

あわせて、講座には各章の理解度テスト(講師の解説付き)重要用語確認テストが用意されています。標準学習時間は講座24時間+予想問題集5時間=約29時間、受講期間はいずれも3か月です。

6-3. この講座は誰に向いているのか——「IT向けでは?」への答え

申し込む前に、ひとつ引っかかっていたことがあります。プロジェクトマネジメントの講座は、たいていIT・システム開発を想定しているのではないか、という懸念です。

実際、公式サイトの「おすすめのお客様」にも、システム開発の現場が例として挙がっています。ただ、並べて読み替えてみると、そのまま建設コンサルの話になることに気づきました。

公式サイトが挙げる「おすすめのお客様」建設コンサルの設計業務に置き換えると
短期間でプロジェクトマネジメントの能力を身につけ、仕事に役立てたい今回の目的そのもの。資格ではなく実務に活かすために学ぶ
低予算化・短納期化が進むシステム開発の現場で、成果物の品質を維持し、納期を確実に守りたい「システム開発」を「設計業務」に置き換えれば、そのまま我々の話。低価格入札と短工期のなかで、照査品質と納期をどう両立するか
プロジェクトマネジャーのスキル強化やモチベーションアップ主任技術者・管理技術者として業務を回す立場。下請けでもスコープ内のマネジャーである
業務の進捗管理や意思決定方法の高位平準化属人化しがちな設計プロセスの標準化・ナレッジ共有

そもそもP2Mは、建設を明示的に含んでいる

調べてみると、P2Mは経済産業省の委託を受けて開発された日本版のプロジェクトマネジメント体系で、活用分野としてエンジニアリング・建設・IT・製造・公共サービスが挙げられています。「建設」は最初から入っているわけです。

さらに、P2Mが扱うのは「具体的にやることが決まっていない」状態から価値創造を立ち上げて成果を出すまでだとされています。2章で書いた多義性——曖昧なまま走り出すのが前提、という発想そのものです。与条件が固まりきらないまま検討が始まる橋梁の計画・設計と、相性が悪いはずがありません。

6-4. 修了条件は「受ければよい」——だからこそ気をつける

修了証はPDFで発行され、次の3つを満たすとダウンロードできます。

  • すべての講座を閲覧する
  • すべての理解度テストを受験し、解説動画をすべて閲覧する ※テストの合否は問わない
  • 重要用語確認テストを受験する ※テストの合否は問わない

ここに落とし穴がある、と思っています

合否を問わないということは、極端に言えば「再生して、テストを受けるだけ」でも修了できてしまうということです。修了証は受験資格に必要なので、そこは通ればいい——という考え方もできます。

でもそれをやると、63,800円を払って「受験券」だけを買ったことになります。今回の目的からすると本末転倒です。修了条件が緩いということは、中身をどこまでやるかが完全に自分次第だ、ということでもあります。

そこで、修了条件とは別に、自分で決めたことが2つあります。ひとつは教材の使い分け、もうひとつは6-8に書く学習ルールです。

教材の使い分け——「読む本」と「引く本」を分ける

受講を決める前に、少し悩んだことがあります。改訂4版のP2M標準ガイドブックは、A5判で744ページ。正直に言って辞書のような分厚さで、これを頭から通読するのは、よほど気力がないと続きません。読み物としては、率直に言って勉強しにくいのです。

技術基準類を扱う仕事をしていると、この感覚は分かってもらえると思います。道路橋示方書を1ページ目から読む人はいません。設計をしながら、必要な条項を引きにいく。そういう本です。P2M標準ガイドブックも、性格としてはそちら側だと感じました。

この講座の教材がパナソニックオリジナルの「PMC研修テキスト(PDF)」だと知って、使い方の答えが出ました。

教材役割使い方
PMC研修テキスト(PDF)
講座オリジナル
読む本(主教材)出題範囲に沿って再構成されている。学習の背骨はこちらで通す。解説動画と理解度テストもセットで付いてくる
改訂4版
P2M標準ガイドブック
744ページ
引く本(辞書)テキストで引っかかった箇所・もっと知りたい箇所だけ、該当ページを開く。定義の正確な言い回しを確認するのにも使う

これが「ガイドブックなし」コースを選んだ、もうひとつの理由

ガイドブックを辞書として使うと決めたなら、講座にセットで付いてくる必要はありません。自分で買って、手元に置いて、必要なときに引ければいい。4,620円という値段も、PMCが終わったあともPMSや総監で引き続き使う本だと考えれば納得できます。

逆に言えば、ガイドブックを主教材にしようとすると、たぶん挫折します。744ページを3か月で通読しながら択一対策までやるのは、働きながらでは現実的ではありません。読む本と引く本を分けること——これが、この講座を無駄にしないための最初の設計だと考えました。

6-5. 費用——受験までで約8.5万円、合格まで含めて約9.5万円(全額自腹)

項目金額(税込)備考
PMC資格対策講座+予想問題集63,800円受講期間3か月・標準29時間
改訂4版 P2M標準ガイドブック4,620円講座に含まれないため別途購入(A5・744ページ)
PMC受験料17,050円事務手数料550円を含む
受験までの小計85,470円
資格登録料(合格後)9,438円5年間有効・更新時のCPU申請は不要
合格・登録までの合計94,908円

支払いは銀行振込のみ(振込手数料は自己負担)。申し込みのキャンセルはいつでも可能ですが、入金後の払い戻しはありません

正直、安くはありません。技術士やRCCMの受験料と比べると、桁がひとつ違う感覚があります。しかもこの金額は、会社からは1円も出ません

6-6. 会社の支援は使えない。それでも実費で学ぶ価値がある

勤務先には資格取得支援の制度がありますが、PMCは対象外です。理由ははっきりしていて、建設コンサルタント業界での知名度がないからです。

断っておくと、建設分野でP2Mがまったく使われていないわけではありません。エンジニアリングや建設の大手企業では導入されている例もあるようです。ただ、少なくとも建設コンサルの設計部門にいて、P2MやPMCの名前を聞くことはほぼありません。社内の資格一覧にも、業務の実績評価にも出てこない。それが実態です。

支援制度の対象になる資格

技術士、RCCM、コンクリート診断士、道路橋点検士——建設コンサルの業務・入札で直接評価される資格。制度は当然そこに最適化されている。

PMC(P2M)は

プロジェクトマネジメントの体系として実績はあり、建設分野の大手では導入例もある。ただし建設コンサル業界では名前が通っていない。社内の資格一覧にも業務評価にも出てこない。だから制度の対象外。

ここで多くの人は「会社が認めていない=価値がない」と読んで、やめてしまうと思います。私も一度は迷いました。

でも、よく考えると、この2つはまったく別の話です。

支援制度の対象かどうかは「業界で評価されるか」の話。
学ぶ価値があるかどうかは「自分の仕事が良くなるか」の話。

制度が業界の慣行に最適化されているのは当たり前で、それは会社が悪いわけでも、P2Mの中身が薄いわけでもありません。ただ、制度の中にあるものだけを学んでいると、会社が用意した枠の中でしか伸びない——そこは自分で判断すべきところだと考えました。

受講者が挙げているメリット——狙いと重なっているか確認した

判断材料として、公式サイトに載っている受講者アンケートの自由記述(一部抜粋)も見ました。要約すると、講座を受けたメリットとして次の3点が挙げられています。

① 規模が大きく複雑な課題でも、整理して取り組めるようになった(自信がついた)

橋梁設計で言えば:上部工・地質・線形・施工計画・地元条件が絡み合う案件を、「複雑だから大変」で終わらせず、構造に分解して手をつけられるということ。7Keysの④システム思考が身についた状態です。(自信がついた)と添えられているのが、個人的にはいちばん響きました。

② プロジェクトのミッションを、企業の戦略の視点から位置づけられるようになった

橋梁設計で言えば:1章で自分が書いた「この設計は、そもそも何のために必要だったのか」という問いへの答えそのものです。目の前の橋梁設計が事業のどこに位置づくのかを語れるようになる——まさに求めていたことでした。

③ 実現可能性を、技術・資金・資源(人を含む)・制約条件から検証できるようになった

橋梁設計で言えば:これは総合技術監理部門そのものです。技術・資金・人・制約を並べて成立性を判断する——4章で整理した5つの管理のトレードオフと、言っていることが同じです。

あわせて、資格を取ったあとのメリットとしては次の3点が挙げられていました。

  • 社内外での評価が上がった
  • 真のプロジェクトマネジャーとして仕事を任されるようになった
  • 経験だけでなく、根拠のある裏付けをもって説明できるようになった

3つ目が、いちばん欲しいものでした

「経験からだけではなく、根拠のある裏付けと説明ができるようになった」——これは、建設コンサルの技術者にとって決定的だと思います。

技術提案や協議の場で、「経験上こうです」は強い武器ですが、同時に弱点でもあります。経験が通じない相手・条件では、とたんに説得力を失う。そこに体系という裏づけが加われば、暗黙知が形式知になり、相手を選ばずに説明できるようになります。

2章で「P2Mを学ぶ価値は、すでに実践していることを説明できる形式知に変えるところにある」と書きました。受講者アンケートが同じことを言っているのを見て、方向は間違っていないと判断しました。

※上記は公式サイトに掲載されている受講者アンケートの自由記述(一部抜粋)を要約したものです。感じ方には個人差があります。

実費でも学ぶ価値があると判断した、5つの理由

① 技術士(総合技術監理部門)に、そのまま効く最大の回収先

4章で整理したとおり、総監の5つの管理はほぼP2Mの章立てに写像できます。総監は「何を管理すべきか」の分類軸は示してくれますが、「それをどう回すか」の手続きまでは教えてくれません。P2Mはそこを埋めてくれます。

つまり:PMCへの投資は総監の学習費用としても回収できる。しかも総監に受かるためだけでなく、受かったあとに実際に使える形で身につきます。

② 投資の回収が、試験日より前に始まる

WBS、クリティカルパス、リスクの洗い出し、ステークホルダーの整理——これらは合格を待つ必要がありません。学んだ翌週の設計業務から使えます。

つまり:「合格して初めて価値が出る」タイプの資格ではない。勉強している最中から業務が変わるのが、この分野の性質です。

③ 資格が失効しても、知識は失効しない

登録は5年間で、更新しなければ資格は切れます。でも学んだ枠組みは消えません。極端に言えば、登録料9,438円を払わなくても、当初の目的は達成できるということです。

つまり:目的が「実務に活かすこと」である以上、資格の維持は必須条件ではない。ここが割り切れると、費用の見え方が変わります。

④ 知名度が低いことは、裏返せば差別化になる

建設コンサルでP2Mを学んでいる人は、まだ多くありません。みんなが持っている資格は、持っていても差がつかない——これはRCCMを取ったときに感じたことです。合格したときは嬉しかったのですが、周りを見渡すと当たり前のように持っている。建設コンサルにとって技術士やRCCMは「あって当然」に近づいていく資格で、必要条件ではあっても、差別化にはなりにくいのだと思いました。

つまり:元請や発注者との協議で他の技術者と違う語彙で説明できることは、技術提案の場面で効いてくるはずです。名前が通っていないことは、いま学ぶ理由にもなります。

⑤ 「言われてやる勉強」より、「必要に迫られた勉強」のほうが強い本音

支援制度に載っている資格だけを順に取っていくのは、効率はいいのですが、学ぶ内容を会社に決めてもらっている状態でもあります。

つまり:自分の弱点は自分がいちばん分かっている。足りないと感じたものを、自分の判断と自分の金で埋める——その経験自体に意味があると思っています。

結局、身につく勉強とそうでない勉強の差はどこにあるか

これまでいくつか資格を取ってきて、はっきり感じていることがあります。「言われたからやった勉強」は、驚くほど残りません。会社の指示で受けた研修、義務で消化したCPD——受けた記録は残っているのに、中身をほとんど思い出せないものがある。

一方で、「これが分からないと目の前の仕事が進まない」という切迫感から自分で調べたことは、何年経っても残っています。設計で行き詰まって基準類を読み込んだ夜のことは、いまでも覚えている。必要に迫られて自分で掘ったものは、経験と結びついて記憶に定着するのだと思います。

今回のP2Mは、まさに後者です。誰にも言われていない。会社は1円も出さない。それでも「事業として、この仕事はどう位置づくのか」を語る枠組みが自分にないという——1章に書いた、あの引っかかりから始まっています。

与えられた勉強は知識で終わるが、必要に迫られた勉強は能力になる。
そう考えると、支援制度の対象外であることは、むしろ好条件かもしれません。

金額を「時間単価」と「手戻り」で見てみる

それでも63,800円は大きい。そこで、2つの物差しで見直してみました。

見方計算感想
時間単価で見る63,800円 ÷ 標準学習時間29時間
約2,200円/時間
解説動画と300問の演習環境が付いてこの単価なら、技術系のセミナーや論文添削と比べて特別高くはない
手戻りと比べる設計業務の手戻り1回1〜2人工条件の確認漏れや関係者調整の失敗で発生する手戻りは、1〜2人工で軽く飛ぶ。それだけでこの講座代とほぼ並ぶ

後者について、もう少し具体的に書きます。手戻りといっても、大げさなものである必要はありません

  • 与条件の確認漏れが後から分かって、計算をやり直す
  • 図面を修正し、照査をもう一度通す
  • 協議資料を作り直して、説明の場をもう一度セットする

この程度のことで、1〜2人工は軽く飛びます。建設コンサルの技術者単価を思い浮かべれば、1〜2人工でこの講座代とほぼ並ぶ——これが実感に近いところです。

しかも、手戻りは1人では終わりません

自分がやり直すだけなら1人工です。でも実際には、照査者がもう一度見て、上司が確認し、元請の窓口が調整に動き、場合によっては発注者の時間まで使う。関係者の工数を合計すれば、1回の手戻りの実コストは、見えている人工よりずっと大きいはずです。

加えて、金額に出てこない損失もあります。納期の余裕が削られ、他の作業にしわ寄せがいき、「あそこは手戻りが多い」という評価が残る。ここまで含めれば、比較にならないと思っています。

7Keysの⑤上流への注力——上流に時間と工数を厚くかけるほど成果が出る、という原則を、自分の学習そのものに適用しただけとも言えます。手戻りを1回減らせれば、それで元は取れる計算です。

自腹には、もうひとつ効用があります

身も蓋もない話ですが、自分の金を払うと本気度が変わります。会社の金で受けた研修より、自分で払ったセミナーのほうが記憶に残っている——心当たりのある方は多いのではないでしょうか。

加えて受講期間3か月・払い戻しなしという条件が、いい意味での強制力になります。「いつかやる」が一番お金を無駄にする、というのは他の資格でも経験済みです。

6-7. 受講開始日のルールと、受験日からの逆算

この講座はいつでも申し込めますが、開始日は毎月1日固定です。入金確認のタイミングで開始月が変わるので、逆算するときに効いてきます。

入金が確認されたタイミング受講開始日
申込月の20日まで申込月の翌月1日から3か月
申込月の21日以降申込月の翌々月1日から3か月
(予想問題集)入金確認日の3日後から3か月

PMC試験は年6回(5月・7月・9月・11月・1月・3月ごろ)で、申込期限は試験開始のおよそ1か月前。ここから素直に逆算すると、こうなります。

  • 申込・入金20日までに入金を済ませれば、翌月1日スタート。ここを逃すとまるまる1か月ずれるので、月の前半に動く。
  • 受講開始〜1か月目ガイドブック第1部で全体の地図を持ちつつ、講座の第3部を進める。
  • 2か月目第3部の残りと第5部(組織・人材・情報)。理解度テストで穴を洗い出す。
  • 3か月目予想問題集300問を回す。修了証を取得
  • 修了後CBTを予約して受験。申込は試験の約1か月前までなので、修了見込みが立った時点で日程を押さえる。

申し込む前に確認しておきたいこと

講座は「翌月1日開始」、予想問題集は「入金確認の3日後開始」と、開始日の決まり方が違います。単純に読むと、問題集の3か月が講座より先に切れる可能性があります。

仕上げの追い込みで使いたい教材が、追い込み前に期限切れ——では困るので、セット申込時の開始日の扱いは事前に問い合わせて確認するつもりです。ここは実際に申し込んだら、結果を追記します。

6-8. 「合格するための勉強」にしないための工夫

この記事でいちばん書いておきたいのはここです。択一試験は、割り切れば用語暗記で通ってしまう。しかも今回の講座は修了条件がテストの合否を問わない。つまり何も身につけずにゴールまで行ける道が、制度上ちゃんと存在しているわけです。

そこで、勉強のルールをひとつ決めました。

章を読んだら、必ず「自分が担当した業務ではどうだったか」を1つ書く

  • スコープ管理を読んだら——あの業務で設計条件の変更をどう扱ったか、記録は残っていたか
  • スケジュール管理を読んだら——照査・協議の待ち時間はクリティカルパスのどこにあったか
  • リスクマネジメントを読んだら——地質のばらつき、既設構造物の不確実性を事前に洗い出せていたか
  • コミュニケーション管理を読んだら——元請・発注者・施工者への情報の流し方に抜けはなかったか
  • ステークホルダー/関係性を読んだら——地元協議で効いたのは何だったか

この作業をやると、択一で問われる用語が、自分の失敗や工夫と結びついた記憶になります。結果として試験にも効くはずですが、狙いは逆で、試験を口実に業務を棚卸しすることにあります。総監の記述対策としても、この蓄積がそのまま材料になります。

※受講料・受験料・日程等は改定されることがあります。金額は必ず公式ページで最新のものをご確認ください。

7. まとめ

  • P2Mはプロジェクトの上に「プログラム」を置く体系。3Sモデル(Scheme/System/Service)で事業のライフサイクルを捉える。
  • 橋梁設計に当てはめると、詳細設計はSystemの一部。価値が発生するのは供用後100年のService——その視点が上流の設計判断を変える。
  • ただし近年は耐震補強・補修補強の業務が増え、新設より維持管理の重要性が増している補強設計はServiceの内側で発生するSystem——設計の仕事はもうSystemだけの住人ではない。
  • 受注型・下請けでもP2Mは活きる。ガイドブック自身が、受注型企業の顧客開拓〜関係構築〜継続受注をプログラムとして扱っている。
  • 元請と下請けは能力の上下ではなく、統合と自律という役割の違い。だからこそ技術提案は「上流へのフィードバック」という責任だと整理できた。
  • 受注型プロジェクトは、発注者にとっての自発型プロジェクト。ガイドブックはライフサイクル全体にわたる事業主と受注者の協働が重要だと明記している。
  • 価値の測り方は立場でズレる——受注者は契約期間内で確定するが、発注者は供用後の便益まで見る。橋梁ならその差は100年成果品を納めることと、価値を出すことは同じではない
  • P2Mにはプレ・システムモデル(担当の前)とポスト・システムモデル(担当の後)を扱う章が独立してあり、PMCの出題範囲に入っている。学習内容そのものが「担当スコープの前後を見よ」と要求している。
  • 7Keysの「上流への注力」「システム思考」は、橋梁設計者がすでに実践していること。P2Mはそれを説明できる形式知に変えてくれる。
  • この暗黙知→形式知は、技術士二次試験の「技術継承」でも問われる論点。自分の設計判断を説明可能にする作業は、そのまま技術継承の準備になる。
  • 総合技術監理部門の5つの管理は、ほぼP2Mの章立てに写像できる。技術士・RCCMと共通の土台になるので、学習投資が無駄になりにくい。
  • いまは令和8年度 技術士第二次試験・建設部門(鋼構造及びコンクリート)の結果待ちで、次に見ているのは総監RCCM(鋼構造及びコンクリート)は保有済み——その問題Ⅲで書いたことは、いま思えばP2Mの第3部とほぼ同じだった。
  • PMCは四肢択一50問・75分のCBT、受験料17,050円講習会またはeラーニングの修了が受験の前提
  • 出題は第3部プロジェクトマネジメントが約7割。ただし第1部を先に読むと理解が繋がる。
  • 受験資格はパナソニックのPMC資格対策講座+予想問題集のセット(63,800円・3か月)で確保する。講座のカリキュラムは出題範囲とそのまま重なるので、これを軸にする。
  • 費用は受験まで約8.5万円/登録まで約9.5万円PMCは建設コンサル業界での知名度がなく、会社の資格取得支援の対象外——全額自腹です。
  • それでも学ぶと決めたのは、①総監の学習費用としても回収できる ②合格を待たず翌週の業務から使える ③資格が失効しても知識は残る ④知名度がないことは差別化になる ⑤何を学ぶかを自分で決める意味がある——の5点から。
  • P2Mの活用分野には「建設」が最初から含まれている(大手では導入例もある)。「低予算化・短納期化のなかで品質を維持し納期を守る」という講座の想定は、「システム開発」を「設計業務」に置き換えればそのまま我々の話
  • 受講者が挙げるメリットは①複雑な課題を整理して取り組めるようになった ②ミッションを戦略の視点から位置づけられるようになった ③技術・資金・資源・制約から実現可能性を検証できるようになった——②は1章の問い、③は総監そのもので、狙いと重なっていることを確認できた。
  • そして「経験だけでなく、根拠のある裏付けをもって説明できるようになった」——暗黙知を形式知に変えるという、この記事でいちばん欲しかったものが、そのまま挙がっていた。
  • 63,800円÷29時間=約2,200円/時間設計の手戻り1回は1〜2人工で軽く飛び、それだけで講座代とほぼ並ぶ(しかも照査者・上司・元請・発注者の工数まで含めれば実コストはもっと大きい)。手戻りを1回減らせれば元は取れる——上流に工数を厚くかける(7Keysの⑤)を自分の学習に適用しただけ、とも言えます。
  • そして——与えられた勉強は知識で終わるが、必要に迫られた勉強は能力になる。誰にも言われていない、会社も出さない。だからこそ残ると考えています。
  • 講座の修了条件はテストの合否を問わない。制度上は身につけずに通過できてしまうので、章ごとに自分の業務で1つ書くを自分に課す。
  • 教材は「読む本」と「引く本」を分ける講座のPMC研修テキストを主教材にし、744ページの標準ガイドブックは道路橋示方書と同じく辞書として引く。ガイドブックを主教材にしようとすると、たぶん挫折する。
  • そして何より——目的は資格ではなく、学んだことを設計業務に落とすこと。章を読むたびに自分の業務で1つ書くを守ります。

受験後は、実際にどう勉強したか・どこが難しかったか・実務がどう変わったかをあらためて記事にする予定です。

参考リンク

P2M資格試験について(日本プロジェクトマネジメント協会:PMAJ)

PMC資格試験 実施要領と年間実施予定(PMAJ)

P2M資格試験対策講座(パナソニック eラーニング)

PMC資格対策講座(eラーニング)|パナソニック

PMC試験 予想問題集|パナソニック

『改訂4版 P2Mプログラム&プロジェクトマネジメント標準ガイドブック』(日本プロジェクトマネジメント協会 編著/日本能率協会マネジメントセンター/2024年9月/A5・744ページ/4,620円税込)

※本記事はP2M標準ガイドブックを読んだうえでの筆者個人の解釈・受験計画であり、PMAJおよび講座提供各社の公式見解ではありません。試験制度・出題範囲・受験料・日程・受講料等は変更されることがあります。受験の際は、必ずPMAJおよび各実施機関の最新の公式情報をご確認ください。

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この記事を書いた人

30代建設コンサル勤務。橋梁設計技術者。
j-adv.comは主に勉強用の個人備忘録ブログです。
技術士試験や関連試験、その他個人的な備忘録です。

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