温度ひび割れ

温度ひび割れ(マスコンクリート)は、H28・R6と出題されている必須準備テーマです。R6ではⅡ-1-4として「発生メカニズム+抑制対策2つ(目的と留意点)」という形で問われました。

この分野の核心は「拘束の2種類」です。内部拘束=表面ひびわれ外部拘束=貫通ひびわれ——これを区別できるかどうかで答案の質が決まります。

  • 2種類の拘束によるメカニズムと、ひびわれの出方の違い
  • [R6]Ⅱ-1-4 の解答例(600字)と骨格
  • 抑制対策5つ(材料・養生・打込み温度・区画分割・誘発目地)と、パイプクーリングの管理値
  • 出題実績 H28 / R6
  • 選択科目Ⅱ-1
  • 600字×1枚
  • 示方書[施工編]2023年制定
目次

1. 定義とメカニズム

項目内容
定義温度ひび割れとは、結合材(セメント等)の水和熱に伴うコンクリートの体積変化が拘束されるために発生する温度応力により引き起こされるひび割れである。
マスコンクリート
の目安
水和熱に起因した温度ひびわれが問題となる構造物は、規模によらずマスコンクリートとして扱う。部材寸法の目安は、広がりのあるスラブで厚さ 80〜100cm以上、下端が拘束された壁で厚さ 50cm以上
発熱量の目安発熱量は単位セメント量にほぼ比例し、単位セメント量 10kg/m³ に対してコンクリート温度が約 1℃ の割合で増減する。

拘束の2種類(ここが最重要)

種類発生メカニズムひびわれの出方
内部拘束型
(表面ひびわれ)
水和反応で内部が高温になる一方、外気に面する表面は冷却されやすい → 内外の膨張量の差が拘束力となり表面部に引張応力が発生表面から発生。急冷時・厚い部材で顕著。亀甲状のひびわれ
外部拘束型
(貫通ひびわれ)
温度上昇後の温度降下時の体積収縮が、岩盤や既設の旧コンクリート等の外部拘束体によって拘束される → 引張応力が蓄積部材を貫通。拘束面に直角方向に規則的に発生。水密性・耐久性を著しく損なう

2種類を書き分けるだけで答案が締まる

「水和熱でひび割れる」で終わる答案と、「内部拘束が卓越すれば表面に亀甲状、外部拘束が卓越すれば拘束面に直角な貫通ひびわれ」と書き分ける答案では、評価が明確に変わります。

しかも対策の説明にも効きます。保温養生は内外温度差を小さくする=内部拘束対策パイプクーリング・プレクーリングは最高温度を下げる=外部拘束対策。目的を問われたときに、どちらの拘束を抑える話なのかで答えられます。

2. [R6]Ⅱ-1-4 解答例

[R6]Ⅱ-1-4

コンクリート構造物の温度ひび割れの発生メカニズムについて説明せよ。また、温度ひび割れの抑制対策を2つ挙げ、それぞれについて目的と留意点を述べよ。

出題文の読み取りポイント

  • 要求は「メカニズムの説明」+「抑制対策2つ」+「それぞれの目的と留意点」目的と留意点はセットで、両方を明示的に書きます。
  • 「目的」は何を下げるのか(内外温度差か、最高温度か、ひびわれの位置制御か)を書けば外しません。
  • メカニズムでは内部拘束と外部拘束の2種類を必ず区別します。
解答用紙イメージ/24字×25行 対策:ひび割れ誘発目地+プレクーリング
11.温度ひび割れのメカニズム
2 セメントの水和熱による温度上昇と、その後の冷却
3に伴う体積変化(膨張・収縮)が拘束されることで引
4張応力が生じ、ひび割れが発生する。部材内部と表面
5の温度差により生じる内部拘束応力が卓越する場合は、
6表面に亀甲状のひび割れが生じる。一方、既設構造物
7や岩盤等による外部拘束応力が卓越する場合は、拘束
8面に直角方向かつ部材を貫通するひび割れが規則的に
9生じる。
102.温度ひび割れの抑制対策と目的・留意点
11(1)ひび割れ誘発目地の設置
12 構造物の長手方向に一定間隔で断面欠損部を設け、
13その部分にひび割れを集中(誘発)させ、他部分での
14発生を防止することを目的とする。留意点は、確実に
15ひび割れを発生させるため、断面欠損率を50%程度と
16することである。また、目地間隔は高さの1~2倍程度
17とし、目地部の鉄筋腐食防止や止水対策を十分に行う。
18(2)プレクーリング等の実施
19 材料をあらかじめ冷却し、コンクリートの練上がり
20温度を下げることで、部材内の最高温度を低減するこ
21とを目的とする。留意点は、各材料の温度低下効果(
22骨材2℃、水4℃、セメント8℃につきコンクリート温
23度1℃低下)を考慮し、骨材の遮光や散水、チラー水
24や氷の使用を行う。氷を用いる場合は、練混ぜ中に完
25全に融解していることを確認する。 以上

参考文献:2023年制定 コンクリート標準示方書[施工編]12章 マスコンクリート

この解答例の骨格

ブロック書いていることねらい
1.メカニズム
(9行)
水和熱による温度上昇と冷却に伴う体積変化の拘束 → 引張応力 → ひび割れ。内部拘束卓越=表面に亀甲状外部拘束卓越=拘束面に直角な貫通ひび割れ2種類の拘束を「卓越する場合は」という書き方で対比。ひびわれの形と向きまで書く
2.(1)ひび割れ
誘発目地
目的=ひび割れを目地部に集中させ他部分での発生を防止/留意点断面欠損率50%程度、目地間隔は高さの1〜2倍程度、目地部の鉄筋腐食防止・止水対策目的と留意点を明示的に分けて書く。数値が2つ入る
2.(2)プレクーリング目的=練上がり温度を下げ部材内の最高温度を低減/留意点骨材2℃・水4℃・セメント8℃でコンクリート温度1℃低下、骨材の遮光・散水、チラー水・氷。氷は練混ぜ中に完全融解を確認暑中コンクリートと共通の数値。氷の完全融解確認という実務的な一言が効く

この答案が上手いところ

対策として「ひび割れ誘発目地」(構造的対策)「プレクーリング」(温度制御)という、性格の異なる2つを選んでいる点です。同じ系統から2つ選ぶより、引き出しの広さが伝わります。

また誘発目地で「目地間隔は高さの1〜2倍程度」、プレクーリングで「氷を用いる場合は練混ぜ中に完全に融解していることを確認」と、教科書的な記述に留まらない実務的な留意点を添えているのも高評価につながります。

3. 抑制対策5つ(どれを問われても書けるように)

① 材料選定・配合設計最重要

目的:温度上昇量および温度上昇速度を根本から低減する。
留意点中庸熱・低熱ポルトランドセメント、高炉セメント・フライアッシュセメント等の低発熱型セメントを使用し、減水効果の高い混和剤を用いて、所要のワーカビリティーを保つ範囲内で単位セメント量をできる限り少なく設定する。

▶ 理由:発熱量は単位セメント量にほぼ比例し(10kg/m³につき約1℃増減する)、発熱源そのものを減らし発熱速度を緩やかにすることが、最高温度を下げて温度応力を低減する上で最も確実な方法であるためである。

② 養生工法による温度制御最重要

目的:部材内外の温度差を小さくする(内部拘束の低減)、および最高温度を下げる(外部拘束の低減)
留意点:表面を発泡スチロールや保温シート等の断熱性の高い材料で覆う保温養生を実施する。大規模なマスコンクリートでは内部に冷却水を通水するパイプクーリングを実施する。

▶ 理由:保温養生は外気による表面の急冷を防いで内外温度差を小さくし、温度降下速度を緩やかにして熱応力を緩和するためである。パイプクーリングは水和が活発な初期材齢に内部温度の最大値を強制的に下げ、温度降下時の体積収縮量を減らして貫通ひびわれを防ぐためである。

③ 打込み温度の管理(プレクーリング)

目的:部材内の最高温度および内外温度差を直接的に低減する。
留意点:プレクーリング(冷水・氷水・小片の氷・液体窒素等)により水や骨材を冷却し、打込み温度の上限を設定して厳格に管理する。

▶ 理由:打込み温度を低く抑えることは部材内部の最高温度の低下に直結し、その後の温度降下量(体積収縮量)を減らして外部拘束による過大な引張応力を防ぐとともに、内部拘束による表面ひびわれリスクも低減できるためである。

④ 打込み区画・打継ぎ時間間隔の設定

目的:外部拘束の度合いを緩和し、過大な温度応力の蓄積を防ぐ。
留意点:事前の温度応力解析に基づき、適切なブロック分割・リフト分割・打継ぎ時間間隔を設定し、現場で厳守する。

▶ 理由:打継ぎ間隔が短すぎると放熱量が少なく全体温度が高くなる一方、長すぎたり区画が大きすぎたりすると旧コンクリートとの温度差・拘束度が大きくなるため、放熱と拘束のバランスを最適化する必要があるためである。

⑤ ひび割れ誘発目地・ひび割れ抑制鉄筋(構造的対策)

目的:有害なひび割れの発生位置を制御し、ひび割れ幅を制限・分散させる。
留意点:壁状の構造物等において長手方向に一定間隔で断面欠損率50%程度以上のひび割れ誘発目地を設置し、目地部に確実な止水処理を施す。表面近くにひび割れ抑制鉄筋を配置する。

▶ 理由:材料や施工の対策だけでひび割れを完全に防ぐことが困難な場合、あらかじめ定めた目地部に計画的かつ集中的にひび割れを誘発させることで、構造物全体としての要求性能を合理的に担保できるためである。

4. 施工中の留意事項(余白があれば加点を狙う)

A|施工条件変更時の再照査

施工時期の変更による気温の変動や、打込み区画の大きさ・リフト高等が大きく変更となる場合には、実際の施工条件に基づき温度ひびわれの再照査を実施する。

▶ 理由:温度ひびわれの発生確率は外気温・打込み温度・拘束条件に極めて敏感に反応するためである。設計時の想定と施工環境が乖離したまま施工すれば、想定外の過大な引張応力が発生し要求性能を満足できなくなる危険性があるためである。

B|温度履歴の実測とフィードバック

コンクリート内部および表面の温度履歴を温度センサー等で実測し、事前検討の妥当性を検証する。

▶ 理由:実測値が事前の温度応力解析と大きく相違する場合には、型枠の取外し時期の延長や養生方法の変更等を速やかに行い、致命的な温度ひびわれの発生を未然に防ぐ必要があるためである。

C|パイプクーリングの温度・通水管理

通水温度とコンクリート内部温度との差を20℃程度以下に管理し、12〜24時間程度ごとに通水方向を切り替える

▶ 理由:通水温度が低すぎるとパイプ周囲のコンクリートが急冷されて局所的な引張応力が生じ、かえってひびわれを助長するためである。通水方向の定期切替は冷却効果の偏りを防ぎ、部材内部の温度分布を均一に保つためである。

5. 答案に入れたいキーワード集

定義・目安
水和熱による体積変化の拘束温度応力スラブ80〜100cm以上下端拘束壁50cm以上単位セメント量10kg/m³≒1℃
拘束の2種類
内部拘束型(表面ひびわれ・亀甲状)外部拘束型(貫通ひびわれ・拘束面に直角)岩盤・旧コンクリートによる拘束
材料
中庸熱ポルトランドセメント低熱ポルトランドセメント高炉スラグ微粉末フライアッシュセメント遅延型混和剤膨張材
温度制御
プレクーリング(冷水・氷・液体窒素)パイプクーリング(冷却水の通水)保温養生(発泡スチロール・保温シート)
照査・計測
温度応力解析ひびわれ指数 Icr温度センサーによる温度履歴の実測
構造的対策
ひび割れ誘発目地(断面欠損率50%以上)目地間隔=高さの1〜2倍程度ひび割れ抑制鉄筋ブロック割・リフト割の厳守
パイプ管理
通水温度と内部温度の差≦20℃12〜24時間ごとに通水方向を切替

6. まとめ

  • メカニズムは「水和熱による体積変化 → 拘束 → 温度応力 → 引張強度超過」内部拘束=表面(亀甲状)/外部拘束=貫通を必ず書き分ける。
  • 対策の目的は「内外温度差を下げる」か「最高温度を下げる」か「ひび割れ位置を制御する」のいずれか。目的を明示すると答案が締まる。
  • 暗記の核は10kg/m³≒1℃断面欠損率50%以上通水温度差20℃以下骨材2℃・水4℃・セメント8℃
  • 最重要対策は①低発熱型セメント+単位セメント量の低減②保温養生+パイプクーリング

参考文献

・2023年制定 コンクリート標準示方書[施工編]12章 マスコンクリート/[設計編]

※本記事は筆者が学習用にまとめた個人の備忘録です。試験対策としての正確性を保証するものではありませんので、必ず最新の示方書等の原典をご確認ください。

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この記事を書いた人

30代建設コンサル勤務。橋梁設計技術者。
j-adv.comは主に勉強用の個人備忘録ブログです。
技術士試験や関連試験、その他個人的な備忘録です。

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