非破壊検査

非破壊検査は、H24・R3と出題されている維持管理系のテーマです。R3ではⅡ-1-4として、「現象から内部の変状を推測 → 求める情報と手法の組合せを2つ → 計測原理と留意点」という、実務の思考プロセスをそのまま問う形式で出されました。

手法名を並べるだけでは点になりません。「何を知りたいから、この手法を選ぶ」という組合せで答える必要があります。

  • 変状から内部の変状を推測し、求める情報 → 適用手法を組み立てる思考の型
  • [R3]Ⅱ-1-4 の解答例(600字)と骨格
  • 6手法の計測原理と実施上の留意点(反発度法・電磁波レーダ法・電磁誘導法・弾性波法・赤外線サーモグラフィ法・電気化学的手法・AE法)
  • 出題実績 H24 / R3
  • 選択科目Ⅱ-1
  • 600字×1枚
  • 示方書[維持管理編]2022年制定
目次

1. 非破壊検査とは

項目内容
定義対象とするコンクリート構造物や部材に物理的損傷を与えることなく電磁波・弾性波・電気化学的性質等の物理的特性を利用して、構造物の内部および表層部の状態に関する情報を得る調査方法である。
適用の位置付け目視・ハンマたたきで得られる情報は表面・表層部の変状に限られる。内部の空洞・損傷、鋼材の位置やかぶり、内部の腐食状況等を損傷なく把握する場合や、劣化機構の推定・劣化程度の定量的判定を行う場合に適用される。
微破壊との区別コア採取・ドリル削孔・はつり等は直接的な定量情報が得られるが損傷を伴う微破壊であり、非破壊検査とは区別される。非破壊検査は損傷を与えないため広範囲の系統的な調査に適する。

「変状 → 推測される内部の変状 → 求める情報と手法」の型

外観の変状推測される内部の変状求める情報と適用手法
浮き・剥離表層の浮き・空気層の形成(凍害・施工不良等)浮き・剥離の範囲・深さ赤外線サーモグラフィ法・弾性波法
エフロレッセンスひびわれ・空洞内の水分・Ca²⁺が溶出 → 鋼材腐食の進行(塩害・中性化)腐食発生の有無・腐食速度電気化学的手法(自然電位法・分極抵抗法)
ひびわれ内部ひびわれの進展・深部への連通(疲労・荷重・化学的劣化)ひびわれの深さ・内部空洞 → 弾性波法(超音波法・衝撃弾性波法)
かぶり不足の懸念かぶり不足・配筋の乱れ・グラウト未充填鋼材位置・かぶり・径電磁波レーダ法・電磁誘導法
変色・風化表層コンクリートの劣化・硬度低下圧縮強度(推定)反発度法
ひびわれの進行性確認現在進行中のひびわれ発生・進展ひびわれの活動性AE法

答案の思考プロセスはこの順番

①見えている現象 → ②そこから推測される内部の変状 → ③知りたい情報 → ④それを得る手法 → ⑤原理 → ⑥留意点

R3の設問はまさにこの流れをなぞって問うています。いきなり手法名から書き始めないこと。「エフロレッセンスと浮きが見られることから〜と推定される」という因果でつなぐと、技術者としての判断力が伝わります。

2. [R3]Ⅱ-1-4 解答例

[R3]Ⅱ-1-4

既設コンクリート構造物において、浮きやエフロレッセンスを伴うひび割れが局所的にみられた。当該コンクリート構造物を長期間供用していくために詳細調査計画を策定すべく、非破壊検査を適用したい。そこで、生じている現象から推測される構造物内部の変状を想定したうえで、求める情報と適用すべき非破壊検査手法の組合せを2つ提案し、それぞれの計測原理及び実施に対する留意点を述べよ。ただし、微破壊により構造物内部を直接調査する方法を含まないものとする。

出題文の読み取りポイント

  • 「微破壊により構造物内部を直接調査する方法を含まない」——コア採取・ドリル削孔・はつりは絶対に書いてはいけません。他分野の答案では調査の定番なので、うっかり書きやすい落とし穴です。
  • 要求は「内部の変状の想定」+「組合せ2つ」+「それぞれの計測原理」+「実施の留意点」組合せとあるので、求める情報と手法をペアで示します。
  • 「詳細調査計画を策定すべく」とあるため、次の調査につなげる目的(対象の絞り込み等)を書けると題意に沿います。
解答用紙イメージ/24字×25行 組合せ:赤外線サーモグラフィ法+電磁波レーダ法
11.現象から推測されるコンクリート内部の変状
2 エフロレッセンスと浮きが見られることから、ひび
3割れからの水分浸入により鉄筋腐食が発生している。
4腐食生成物の体積膨張により、かぶりコンクリート内
5部に水平ひび割れ(層間剥離)が生じていると推定さ
6れる。
72.求める情報と非破壊検査手法の組合せ
8(1)浮きの広がり:赤外線サーモグラフィ法
9 詳細調査の対象を絞り込むため、浮きの平面的な分
10布範囲を求める。原理は、変状部にある空気層の断熱
11効果により生じる表面温度差を赤外線カメラで熱画像
12として捉え、浮きを検出する。日射による熱供給が必
13要なため時間帯を厳密に選定し、表面の汚れや水濡れ
14による放射率への影響を排除して測定精度を確保する。
15(2)鉄筋位置とかぶり:電磁波レーダ法
16 劣化原因の推定や補修時の鉄筋損傷防止のため、鉄
17筋位置とかぶりを求める。原理は、表面から電磁波を
18放射し、比誘電率の異なる鉄筋等の境界面からの反射
19波を受信して、到達時間から深さを画像化する。含水
20率が高い場合や配筋が密な場合は電磁波が減衰し干渉
21するため、探査深度や分解能に応じた適切な周波数を
22選定する。
23                      以上
24
25

参考文献:2022年制定 コンクリート標準示方書[維持管理編]標準附属書 3編2章 2.4 非破壊試験機器による調査

この解答例の骨格

ブロック書いていることねらい
1.内部の変状の想定
(6行)
エフロレッセンス+浮き → ひび割れからの水分浸入により鉄筋腐食が発生 → 腐食生成物の体積膨張 → かぶり内部に水平ひび割れ(層間剥離)設問の「推測される内部の変状」に直答。層間剥離という具体語まで踏み込む
2.(1) 浮きの広がり
×赤外線サーモグラフィ法
求める情報=浮きの平面的な分布範囲(詳細調査の対象を絞り込むため)/原理=空気層の断熱効果による表面温度差を熱画像で検出/留意点=日射による熱供給が必要なため時間帯を選定、汚れ・水濡れによる放射率の影響を排除目的(絞り込み)→原理→留意点の順で1セット。放射率が効く
2.(2) 鉄筋位置とかぶり
×電磁波レーダ法
求める情報=鉄筋位置とかぶり(劣化原因の推定・補修時の鉄筋損傷防止のため)/原理比誘電率の異なる境界面からの反射波の到達時間から深さを画像化/留意点=含水率が高い場合・配筋が密な場合は減衰・干渉 → 適切な周波数を選定「補修時の鉄筋損傷防止」という実務的な目的を添えているのが上手い

3. 6手法の計測原理と実施上の留意点

① 反発度法(テストハンマー)|圧縮強度の推定

原理:表面をばねの力を利用したハンマーで打撃し、その反発硬度(反発度)を測定して、あらかじめ作成した相関関係から圧縮強度を推定する。
留意点:表面の濡れ等の含水状態中性化等の経年劣化の影響を適切に評価・補正すること。

▶ 理由:反発度法はコンクリート「表層部」の表面硬度を測定する試験であり、乾燥・中性化して表面が硬化している場合は過大評価、含水率が高い場合は過小評価となり、内部の実際の圧縮強度と乖離するためである。

② 電磁波レーダ法・電磁誘導法|鋼材位置・かぶり頻出

原理〈電磁波レーダ法〉:表面から電磁波を放射し、比誘電率の異なる鋼材等からの反射波の到達時間を利用して位置・かぶり深さを推定する。
原理〈電磁誘導法〉:表面から交流磁界を発生させ、鋼材に生じる渦電流による磁界の変化を利用して位置・径・かぶりを推定する。
留意点鋼材の配置が密な箇所含水率が高い箇所では測定精度の低下・測定困難を考慮すること。

▶ 理由:電磁誘導法は近接した複数の鉄筋の磁界が干渉して個々の分離が困難になるためである。電磁波レーダ法は含水率によって比誘電率が変化するため、表層部の測定値から算定した伝播速度をそのまま内部に適用すると深さの算定に大きな誤差が生じるためである。

③ 弾性波法(超音波法・衝撃弾性波法)|内部の浮き・空洞・ひびわれ

原理:コンクリートを伝播する弾性波の伝播速度・反射・屈折・減衰等の特性変化を利用して内部の空隙や劣化状態を推定する。
留意点:部材厚や想定される欠陥の大きさに応じて、超音波法か衝撃弾性波法かを使い分けること。

▶ 理由:超音波(高周波)は指向性・分解能が高く微細なひびわれの検出に優れるが減衰が大きく深部に届かない衝撃弾性波(低周波)は長距離を伝播し部材厚やグラウト充填状況等の深部探査に優れるが微小な欠陥の検出は困難という、波動の物理的特性に伴うトレードオフが存在するためである。

④ 赤外線サーモグラフィ法|表層部の広範囲な浮き・剥離頻出

原理:表面の温度分布を赤外線カメラで測定し、健全部と浮き・剥離部(内部に空気層が存在するため熱伝導率・熱容量が異なる)との表面温度差を画像として捉え、変状を面的に検出する。
留意点日射・気温・風速など表面に熱エネルギーを与える環境条件を十分検討し、適切な測定日時(時間帯)を設定すること。

▶ 理由:日照による温度上昇時や夜間の冷却時等、表面と内部に温度勾配が生じている時間帯でなければ欠陥部と健全部の温度差が明瞭に現れないためである。雨天や日陰等の不適切な条件下では変状の見落とし、または健全部を変状と誤判定する致命的なエラーを招くためである。

⑤ 電気化学的手法(自然電位法・分極抵抗法)|鋼材腐食

原理:鋼材が腐食する過程で生じる電気化学的な特性変化を利用する。自然電位法は照合電極と内部鋼材との電位差を測定して腐食の可能性を判定し、分極抵抗法は微小な電流を印加した際の抵抗値から腐食速度を推定する。
留意点含水状態や溶存酸素量が測定値に多大な影響を及ぼすため、表面の乾燥・湿潤状態を的確に把握した上で結果を解釈すること。

▶ 理由:極度に乾燥している場合や水浸状態等で酸素供給が絶たれている場合には、実際の腐食状態と大きく乖離した値を示すことがあり、自然電位の絶対値のみで腐食の有無を機械的に判定すると構造物の性能評価を誤る危険性があるためである。

⑥ AE法(アコースティック・エミッション)|進行中のひびわれ

原理:材料内部で微小なひびわれが発生・進展する際に、蓄積されたひずみエネルギーが解放されて生じる弾性波(AE波)を複数のセンサーで受信し、音源位置や活動度を評価する。
留意点:既に発生して進行が停止しているひびわれや空洞等の静的な欠陥は探査できないことを理解して適用すること。

▶ 理由:AE波は材料が破壊(ひびわれが進展)する瞬間にのみ自発的に放出される動的な現象であり、外部からエネルギーを与えるアクティブな手法ではないため、現在まさに劣化が進行中であるか否か(リアルタイムの活動性)を判定する目的にのみ有効な手法であるためである。

4. 答案に入れたいキーワード集

定義・原理
物理的損傷を与えない電磁波・弾性波・電気化学的性質微破壊(コア・削孔・はつり)とは区別広範囲の系統的な調査
反発度法
反発硬度(反発度)圧縮強度の推定表層部のみ含水状態・中性化の補正
電磁波レーダ法
比誘電率反射波の到達時間かぶり推定含水率で深さ算定に誤差周波数の選定
電磁誘導法
渦電流による磁界変化鋼材位置・径・かぶり近接鉄筋の磁界干渉
弾性波法
伝播速度・反射・屈折・減衰超音波法(高周波・高分解能・短距離)衝撃弾性波法(低周波・深部探査)
赤外線サーモグラフィ法
表面温度分布空気層の断熱効果面的検出温度勾配が生じる時間帯放射率
電気化学的手法
自然電位法(電位差→腐食の可能性)分極抵抗法(腐食速度)含水状態・溶存酸素量の影響
AE法
AE波音源位置・活動度進行中のひびわれにのみ有効静的欠陥は探査不可

5. まとめ

  • 答案は「現象 → 推測される内部の変状 → 求める情報 → 手法 → 原理 → 留意点」の順で組み立てる。手法名から書き始めない。
  • R3の「微破壊を含まない」という除外条件は最大の落とし穴。コア採取・削孔・はつりは書かない
  • 原理は「何を利用して何を推定するか」の構造で1〜2文。留意点は「何をするか+なぜか」で締める。
  • 使いやすい組合せは赤外線サーモグラフィ法(浮きの範囲)+電磁波レーダ法(かぶり)。どちらも原理と留意点が明快に書ける。

参考文献

・2022年制定 コンクリート標準示方書[維持管理編]標準附属書 3編2章 2.4 非破壊試験機器による調査

※本記事は筆者が学習用にまとめた個人の備忘録です。試験対策としての正確性を保証するものではありませんので、必ず最新の示方書等の原典をご確認ください。

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この記事を書いた人

30代建設コンサル勤務。橋梁設計技術者。
j-adv.comは主に勉強用の個人備忘録ブログです。
技術士試験や関連試験、その他個人的な備忘録です。

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