寒中コンクリートは、暑中コンクリートと対になる選択科目Ⅱ-1の頻出テーマです。直近ではR5に出題されました。定義の気温、初期凍害、養生温度と、覚えるべき数値がはっきりしているので、暑中とセットで整理すると一気に固まります。
この記事では、令和5年度Ⅱ-1-4を題材に、以下を整理しています。
- 600字(24字×25行)で仕上げた解答例(原稿用紙イメージ)
- この分野の核心である初期凍害のメカニズム
- ①材料〜⑤養生の対策5段階+理由と、暑中コンクリートとの対比表
- 出題実績 R5
- 選択科目Ⅱ-1
- 600字×1枚
- コンクリート標準示方書[施工編]2023年制定
1. 令和5年度 Ⅱ-1-4 の問題文
[R5]Ⅱ-1-4
寒中コンクリートとして施工する気象条件について概説し、コンクリート構造物の品質を確保するうえで留意すべき事項を施工計画、品質、材料、配(調)合、練混ぜ、運搬及び打込み、養生、型枠及び支保工、品質管理から2項目を選んで示し、それぞれに対する対策を述べよ。
出題文の読み取りポイント
- 第1要求は「定義」ではなく「施工する気象条件について概説」。日平均気温4℃以下という条件に加え、なぜその条件で特別な扱いが必要になるのか(水和反応の阻害・初期凍害)まで書いて「概説」になります。
- 選択肢が9項目と多く、暑中(5項目)より自由度が高い出題です。裏を返せば、どれを選んでも書けるだけの引き出しが要ります。
- 求められているのは「留意すべき事項」+「それぞれに対する対策」の2階建て。事項だけ並べて終わらないよう注意します。
2. 解答例(600字・24字×25行)
選んだのは「運搬及び打込み」と「養生」。寒中コンクリートの本質は「初期凍害を受けさせないこと」にあり、その勝負どころがこの2項目に集中しているためです。打込み温度5〜20℃、養生温度5℃以上、5N/mm²という数値がそのまま書けるのも選定理由です。
参考文献:2023年制定 コンクリート標準示方書[施工編] 10章 施工環境等に応じたコンクリート工/10.2 寒中コンクリート
この解答例の骨格
| ブロック | 書いていること | ねらい |
|---|---|---|
| 1.気象条件(6行) | 示方書の定義(4℃以下)+凝結・硬化の遅延+初期凍害で強度が回復しないこと | 「概説せよ」に対し、条件+理由で答える。ここで初期凍害を出しておく |
| 2.(1)運搬及び打込み | 打込み温度5〜20℃/保温カバー/氷雪の完全除去・解凍/露出時間の最小化 | 凍結面への打込みという致命的な失敗を潰す |
| 2.(2)養生 | 5N/mm²(厳しい気象では15N/mm²)まで5℃以上/徐冷/さらに2日間0℃以上 | 初期凍害防止と、養生終了後の温度ひび割れまで手当てする |
9項目のうち、どれを選ぶか
- 迷ったら「運搬及び打込み」+「養生」。示方書の数値基準を最も多く書け、寒中コンクリートの本質(初期凍害の防止)に直結します。
- 「材料」を選ぶなら早強ポルトランドセメント+AE剤+凍結骨材の使用禁止、「型枠及び支保工」なら側圧の増大と地盤の凍上、「品質管理」なら積算温度(マチュリティ)が核になります(いずれも本記事の6章で整理しています)。
- 2項目は内容が重ならない組合せを選ぶこと。「運搬及び打込み」と「練混ぜ」は温度確保の話が被りやすく、記述量のわりに評価が伸びません。
3. まず覚える:定義と管理基準値
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | 日平均気温が4℃以下になることが予想されるときは、寒中コンクリートとして施工する。 |
| 原理・背景 | 5℃程度以下の低温にさらされると水和反応が阻害され、凝結・硬化が遅延する。 |
| 凍結温度 | 約 −0.5〜−2℃ 以下で未反応水が凍結・体積膨張し、初期凍害が発生する。 |
| 基本原理 | 初期凍害に対する抵抗性が得られる強度(一般に 5N/mm²以上)を早期に確保すること。厳しい気象条件では10〜15N/mm²。 |
| 打込み時温度 | 5〜20℃(薄い部材は10℃程度)。 |
| 養生温度 | 所定の強度が得られるまで 5℃以上 を保持。厳しい気象条件では、所定強度取得後さらに2日間0℃以上。 |
| 製造上の禁止事項 | セメントの加熱は禁止。骨材の加熱は 65℃以下。凍結骨材・氷雪混入骨材は使用しない。 |
数字が紛らわしいところ
- 定義は4℃以下、打込み・養生の下限は5℃。1℃差なので取り違えに注意します。「4で判定、5で管理」と語呂で覚えると安全です。
- 初期凍害防止強度は一般に5N/mm²以上、厳しい気象条件では10〜15N/mm²。上の解答例では厳しい条件側を15N/mm²と書いていますが、答案では「10〜15N/mm²」と幅で書いても問題ありません。
- 加熱してよいのは水と骨材だけ(骨材は65℃以下)。セメントは絶対に加熱しない——ここは頻出の引っかけポイントです。
4. 最大リスクは「初期凍害」
暑中コンクリートのリスクが5つに分散していたのに対し、寒中コンクリートは初期凍害という一点に集約されます。ここを説明できるかどうかが答案の質を決めます。
- 低温(5℃程度以下)でセメントの水和反応が阻害 → 凝結・硬化の著しい遅延
- 凍結温度(約−0.5〜−2℃)以下にさらされる → 内部の未反応水が凍結し体積膨張
- 膨張圧が組織を破壊 → 初期凍害の発生
- 一度受けるとその後どれだけ養生しても強度が回復しない → 致命的欠陥(強度・水密性・耐久性の著しい低下)
だから「早期に5N/mm²」が基本原理になる
初期凍害はあとから取り返せないのが最大の特徴です。したがって寒中コンクリートの対策はすべて、「凍結される前に、抵抗できるだけの強度(5N/mm²)を確保する」という一本の筋に集約されます。①早強セメントで強度発現を早める、②単位水量を減らして凍る水そのものを減らす、⑤保温・給熱で水和反応を止めない——理由を問われたら、この筋に戻して書けば外しません。
5. 対策5段階(①材料 〜 ⑤養生)
R5は9項目からの選択でしたが、示方書の流れは暑中と同じ①材料 → ②配合 → ③製造・運搬 → ④打込み → ⑤養生です。R5の解答例で選んだ「運搬及び打込み」は③④、「養生」は⑤に対応します。
① 材料選定
早強ポルトランドセメント等を使用し、凍結した骨材や氷雪が混入した骨材は絶対に使用しない。AE剤・高性能AE減水剤を適切に使用する。
▶ 理由:低温下での強度発現の遅延を補い、初期凍害防止に必要な圧縮強度を早期に得るため。AE剤は微細な空気泡が凍結時の膨張圧を緩和して耐凍害性を高めるため。② 配(調)合計画
所定のワーカビリティーが保てる範囲内で、単位水量をできる限り少なく設定する。
▶ 理由:コンクリート中に含まれる凍結可能な水分量を物理的に減らし、初期凍害のリスクを低減するため。③ 製造・運搬
水または骨材を加熱して練上がり温度を確保し、アジテータ車・輸送管の保温対策を講じる。セメントの加熱は絶対に行ってはならず、骨材の加熱も65℃以下とする。
▶ 理由:セメントを直接加熱したり高温の水と接触させると急結が生じるため。輸送管の温度が低すぎると管内壁にモルタルが凍結・付着して圧送閉塞が生じるため。④ 打込み・締固め最重要
打込み時のコンクリート温度は5〜20℃(薄い部材は10℃程度)の範囲に保つ。打込み前には鉄筋・型枠等の氷雪を完全に除去し、凍結した打継目や地盤は解凍してから打ち込む。
▶ 理由:温度が5℃を下回ると初期凍害リスクが高まり、20℃を超えると温度ひびわれ等が生じるため。氷雪の巻込みや凍結面への打込みはコンクリートを急冷させ、打継目の一体性を阻害するため。⑤ 仕上げ・養生最重要
打込み終了後はただちにシート等の保温性材料で覆い、コンクリート温度を5℃以上に保つ保温養生または給熱養生を実施する。給熱する場合は散水や加湿を併用する。
▶ 理由:初期凍害を防止するために必要な圧縮強度が得られるまで水和反応を確実に進行させるため。給熱時に加湿を併用するのは、局所的な加熱によるコンクリート表面の急激な乾燥・ひびわれを防止するため。6. 留意事項(他の項目を選ぶときの引き出し)
R5の選択肢にある「型枠及び支保工」「品質管理」を選ぶ場合は、この3点がそのまま解答になります。
A|型枠・支保工の設計 (→「型枠及び支保工」)
保温性に優れた木製型枠等の使用を検討し、低温による側圧の増大を見込んで堅固に設計する。支保工は地盤の凍上や融解による変位が生じない確実な位置に設置する。
▶ 理由:低温下では凝結・硬化が遅延して液状化状態の時間が長くなり、型枠側圧が通常より著しく大きくなるため。地盤凍上・融解による支保工変位は倒壊事故等の重大な労働災害に直結するため。B|養生終了時の急冷防止 (→「養生」の上乗せ)
型枠取外し時はシート等で保護し、徐々に温度を低下させる。厳しい気象作用を受ける場合は、所定強度取得後さらに2日間、養生温度を0℃以上に保つ。
▶ 理由:養生終了時でもコンクリート内部は高温状態にあることが多く、急激な冷却により内外温度差が生じると、熱応力による温度ひびわれを誘発して耐久性を損なうため。C|現場供試体・積算温度による強度管理 (→「品質管理」)
型枠・支保工の取外し時期や養生終了時期の判断は、現場の構造物と同じ温度履歴を受けた供試体の圧縮強度、または積算温度(マチュリティ)により推定した強度を用いる。
▶ 理由:寒中環境下では日々の気温変動が大きく、標準養生試験値と実際の構造物内部の強度が大きく乖離する可能性が高いため。7. 暑中コンクリートとの対比
この2つは対で覚えると定着が段違いです。数値を並べて確認しておきます。
| 観点 | 寒中コンクリート | 暑中コンクリート |
|---|---|---|
| 定義 | 日平均気温 4℃以下 | 日平均気温 25℃超 |
| 最大の敵 | 初期凍害(回復しない) | スランプロス・コールドジョイント |
| 打込み時温度 | 5〜20℃(薄部材10℃程度) | 35℃以下 |
| 温度の扱い | 加熱して上げる(水・骨材/セメントは不可) | プレクーリングで下げる(冷水・砕氷・骨材散水) |
| 運搬 | 保温カバーで温度低下を防ぐ | 遮熱塗料・カバー・散水で温度上昇を防ぐ |
| 養生の目的 | 5N/mm²確保まで5℃以上を保つ(保温・給熱) | 急激な乾燥を防ぐ(速やかな湿潤養生) |
| 養生後の注意 | 急冷を避け徐冷(温度ひびわれ) | 内外温度差による温度ひびわれ |
| 時間帯の工夫 | —(日中の暖かい時間帯に打込み) | 早朝・夜間に打込み |
8. 答案に入れたいキーワード集
- 適用基準
- 日平均気温4℃以下コンクリート凍結温度 約−0.5〜−2℃
- 基本原理
- 初期凍害防止強度 5N/mm²以上厳しい気象条件では10〜15N/mm²
- 打込み温度
- 打込み時5〜20℃薄い部材は10℃程度
- 材料
- 早強ポルトランドセメントAE剤・AE減水剤(エントレインドエア)凍結骨材・氷雪混入骨材の使用禁止
- 製造の制限
- セメント加熱禁止骨材加熱温度65℃以下急結輸送管の圧送閉塞
- 養生
- 保温養生給熱養生(加湿を併用)コンクリート温度5℃以上維持徐冷所定強度後さらに2日間0℃以上
- 強度管理
- 現場と同一温度履歴の供試体積算温度(マチュリティ)
- 側圧・安全
- 硬化遅延による型枠側圧の増大木製型枠地盤の凍上支保工の変位
9. まとめ
- 寒中コンクリートはR5出題の頻出テーマ。第1要求は「定義」ではなく「気象条件の概説」——条件+理由まで書く。
- すべての対策は「凍結される前に5N/mm²を確保する」という一本の筋につながる。理由づけに迷ったらここへ戻る。
- 暗記の核は4℃(定義)/5〜20℃(打込み)/5℃以上(養生)/5N/mm²/65℃以下(骨材加熱)。セメント加熱禁止も忘れずに。
- 9項目からの選択なら「運搬及び打込み」+「養生」が最も書きやすい。他項目に振られても、留意事項A〜Cが引き出しになる。
参考文献
・2023年制定 コンクリート標準示方書[施工編] 10章 施工環境等に応じたコンクリート工/10.2 寒中コンクリート
※本記事は筆者が学習用にまとめた個人の備忘録です。試験対策としての正確性を保証するものではありませんので、必ず最新の示方書等の原典をご確認ください。
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